KiTCC 平田洸介選手のカーリング講座
2018年 、SC軽井沢チームとして平昌オリンピック代表に選出された経験のある、
KiT CURLING CLUBの平田洸介選手と同チーム臼井慎吾選手によるカーリング戦術講座です。
実際のストーンの動きを見ながら試合展開や選手の狙い、ショットのテクニックを解説されています。
カーリングは、後攻が有利なスポーツです。
得点が入ったチームが次のエンドは先攻になるので、先攻チームは次のエンドを有利な後攻でむかえられるように相手に1 点だけ取らせる方法を考えながら試合を進めます。
【先攻:黄 後攻:赤】
1投目
黄:ハウスの中心の延長線にガードストーンを置く。
赤:ガードの裏にナンバー1ストーンを置く。
2投目
黄:相手のストーンの前につけることで、相手の2 点目獲得エリアを狭くする。赤:複数点が欲しいのでナンバー2ストーンとなっている黄ストーンを出しにいくが、奥に赤ストーンがあるため難しい。さらに、押されて黄ストーンがナンバー1ストーンになる可能性もある。
このように、後攻チームに1 点だけ取らせ、尚且つ複数点を防ぐためにはハウスの狭い範囲で戦うことが重要になります。
実際の試合の流れで、先攻チームがどのように相手に1点だけ取らせるのか戦い方をみてみましょう。
【先攻:赤 後攻:黄】
1投目
赤:ハウスの中心の延長線上にガードストーンを置く。
黄:ハウスの中が空いているので、ガードストーンの裏にナンバー1ストーンを作る。
2 投目
赤:ハウスの中心付近、又は相手のストーンの前に付けることで相手の複数点を防ぐ。
黄:複数点獲得のため付いているストーンに当てて散らせる。
3 投目
赤:複数点を防ぎたいので、相手のストーンに再び付ける、または弾き出して戦う範囲を狭くする。
黄:図の場合、ダブルテイクアウトが狙えるので、ハウス内の相手のストーンを弾く。
4 投目
赤:再度、相手のストーンを外に出して自分たちのストーンをハウス内に残す。
黄:ハウスの中心が空いているので入れる。
5 投目
赤:ナンバー1ストーンがガードストーンより少し見えているので当てにいく。
黄:ナンバー1ストーンを守るためガードストーンを置く。
6 投目
赤:相手が作ったガードストーンの裏に置いて複数点を取られにくくする。
黄:複数点が欲しいのでストーンを当てて散らす。
7 投目
赤:相手がナンバー1ストーンを持っているので、自分のストーンを押してナンバー1を取りにいく。
黄:ハウス内のストーンに当てて外に出す。
8 投目(ラストショット)
赤:ハウス内の相手ストーンを外に出して自分のストーンを残し、複数点獲得できる状況にする。
黄:複数点取られたくないので、中心に置いて1 点だけ取ることになる。
先攻:赤 0 点 後攻:黄 1 点
得点したチームが次のエンドは先攻になるので、赤チームは次のエンドを有利な後攻で向かえることができます
図1は、赤のナンバー1ストーンは手前のガードストーンに隠れ、尚且つダブルテイクアウトも狙うのが難しい状況です。(黄チームは赤チームの複数点を防ぎ1点のみ取らせたい)
【先攻:黄 後攻:赤】
黄:相手のナンバー1ストーンにピタリと付けることで、2 点目の獲得エリアを無くす。
赤:2 点目を獲得するには、端の赤ストーンに当てて逆サイドに飛ばすという難易度の高いショットを求められる。
先攻チームは、相手の2 点目を防ぐ方法を考えながら戦います。
後攻チームは複数点獲得を目指して試合を進めていきます。
【先攻:黄 後攻:赤】
1投目
黄:ハウスの中心付近にナンバー1ストーンを作る。
赤:ナンバー1ストーンを出して赤ストーンを残すと、交互に繰り返され最終的に後攻チームが1 点しか獲得出来ないことになる。なのでナンバー1ストーンはそのままに、フリーガードゾーンルール(※)も考慮し端側にガードストーンを置く。
2投目
黄:ナンバー1ストーンを守るためにガードを置く。
赤:赤のガードストーンの裏に隠す。
3投目
黄:さらにガードストーンを置く、またはハウス内の赤ストーンを弾き出しにいく。赤ストーンを狙う場合は、手前のガードストーンにぶつかってしまう場合もある。
赤:ガードストーンがずれてナンバー1ストーンが狙える状態になっているのでテイクアウトし、複数点を獲得できる状態にする。
このように、後攻チームは布石となるガードストーンを置くことが重要です。
ガードストーンの裏に隠すショットや、相手のナンバー1ストーンが狙える状態であればテイクアウトしていきます。
テイクアウトした場合、当たる角度によっては再度ガードストーンの裏に投球したストーンを残すこともできます。
なるべくハウスを広く使うのが後攻の戦い方です。
※フリーガードゾーンルール
フリーガードゾーンは、上図の黄色い範囲です。
各エンドごとに、それぞれのチームのリードが投げる計4投とセカンドの1投目までは相手のストーンをプレイエリアから出してはいけません。誤って出してしまった場合は、相手のストーンを元の位置に戻し、投球したストーンは取り除かれます。フリーガードゾーンからハウスの中に押し込むのはプレイエリア内なので問題ありません。
実際の試合の流れで、後攻チームがどのように複数点獲得するのかみてみましょう。【先攻:黄 後攻:赤】
1投目
黄:ハウスの中心に置く。
赤:ハウスの外・端側にガードストーンを置く。
2 投目
黄:ナンバー1ストーンを守るためにガードストーンを置く。
赤:ガードストーンがずれてナンバー1ストーンが見えている場合はそのままテイクアウトショットを狙える。
または、ガードストーンでナンバー1ストーンが隠れてテイクアウトショットが難しい場合、端に置いた自分たちのガードストーンの裏に置くことでハウスを広く使うようにする。
3 投目
黄:ガードを増やすか、ハウス内の石に当ててくるが、当ててくる場合は手前のガードストーンにぶつかるリスクがある。
赤:ガードストーンに当たった場合、ナンバー1ストーンが見えるのでテイクアウトし、自分たちのストーンも残す。
4 投目
黄:ハウス内のストーンに当てにくるが、端側のガードストーンに当たるリスクがある。
赤:ハウス内のストーンを守るためガードストーンを置く。
5 投目
黄:ハウス内のストーンに当てにくるが、ガードストーンが増えているので難しい。ガードストーンに当たった場合、投球したストーンもガードストーンとして残る場合がある。
赤:逆サイドにストーンを置き、ダブルテイクアウトをされにくい状況を作る。
6 投目
黄:複数点を防ぎたいのでダブルテイクアウトを狙うが、逆サイドのため失敗する確率が高い。
赤:逆サイドが空いているので再度ストーンを置く。
7 投目
黄:ダブルテイクアウトを狙うのが厳しいので、ストーンを1つだけ外に出し、且つ自分たちのストーンを中心に残す。
赤:相手のナンバー1ストーンに当てにいくが、ガードストーンがあるためリスクがある。
8 投目(ラストショット)
黄:ナンバー1ストーンを守るためガードストーンを置く。
赤:ガードストーンがずれていればナンバー1ストーンを外に出して自分たちの1ストーンを残し複数点を獲得できる。
先攻:黄 0 点 後攻:赤 3点
赤チームは次のエンドを先攻で向かえることになりますが、複数点獲得しているため勝率が上がります。
図2は、黄左のストーンはガードストーンからはみ出していて、黄右のストーンはほぼ隠れている状況です。
【先攻:黄 後攻:赤】
赤チーム
《パターン1》
見えているストーンをテイクアウトして、赤ストーンをナンバー1ストーンに残した場合、次の相手のショットでまたテイクアウトされてしまい、繰り返すと最終的に1 点しかとれなくなってしまう。
《パターン2》
相手のストーンにピタリと付け、当てられても外に出ないようにする。
後攻チームは、弾かれても自分たちのストーンが生き残れるように戦います。
相手のストーンを弾き出すテイクアウトショットはどのような会話、スピード、角度で生まれるのでしょう。
図3は、後攻:赤チームのラストショットの場面です。
相手(先攻:黄チーム)ストーンのダブルテイクアウトを狙って考えます。
まず当て方によって、ストーンの動き方は変わってくるので、どの方向へ飛ばしたいか話し合います。
・内側から当てる(左回転)と、黄ストーンが残る
・外側から当てる(右回転)と黄ストーンが割れてダブルテイクアウト成功
回転の向きとスピードで、ストーンの飛ばす方向・ハウスに残すか・どの位置に残したいかを考え話し合い、テイクアウトを狙っていきます。
図4は、黄ストーンが2個、ほぼ平行に位置しています。
・内側から狙うと・・・
赤ストーンは奥へ飛んで自分たちのストーンも外へ出てしまう
・外側から狙うと・・・
赤ストーンは横へ飛んで2つ目の黄ストーンへ向かっていく
このように当てる角度、回転により方向が変わってきます。
図5は、黄ストーンが2個、角度がある状態で位置しています。
・内側から狙うと・・・
赤ストーンは奥へ飛んで2つ目の黄ストーンへ向かっていく
・外側から狙うと・・・
赤ストーンは横へ飛んで自分たちのストーンも外へ出てしまう
このように、テイクアウトは作戦を立てて投球します。